■American Gangster アメリカン・ギャングスター | ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY

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■American Gangster アメリカン・ギャングスター

●原題のまま「アメリカン・ギャングスター」でいくのが筋か。2004年に製作に入り、監督降板後に停止していた作品が新たな製作陣を加え、監督を向かえ、主役の一方を挿げ替えて撮影…完成した。

物語は、雑誌「New York」にマーク・ジェイコブソンが書いた記事「The Return of Superfly」を題材にし、1970年代にハーレムで最も強敵だった麻薬王として暗躍した人物をどのように逮捕したのかという事実に基づいたドラマ。
主役は当初から変更なし、ハーレムの麻薬王であった実在の人物フランク・ルーカスに扮するはデンゼル・ワシントン。フランクは、ベトナム戦争時代にベトナムで死んだ兵士の棺にヘロインを隠し、密輸入したという人物。





映画は、当初ユニバーサルの2005年6月3日公開予定作品だったが、2006年公開予定へ変更され、デンゼル・ワシントンとベニシオ・デル・トロ共演作「Tru Blu / アメリカン・ギャングスター」として進行していた。しかし監督アントワン・フークワが「創造的な意見の違い」という表明後に降板。既に準備に入っていたスタッフ、キャストをそのままに新たな監督を捜しながら同時にプロジェクト自体に何ら変更はなく続行されるという発表が即行でユニバーサルの広報部より明らかにされる…がその後、ユニバーサルが「American Gangster」製作中止を表明。

映画は、既にハーレムで撮影を開始することになっていたものの、監督降板から、製作は続行、そして製作中止と二転三転。映画の当初のバジェット凡そ8000万ドルを今後大幅に上回るだろうという予測と、公開後に費用を回収するには困難、さらに時間的な制約と内容のコアな点などを加味して、ユニバーサルのトップ連が決定したのだろうとの事だった。つまり資金が足りない…儲けそこなう危険どころか、過激な描写が多くなりそー、主演2人の動員…コリャイカンな~、って事だったのだろうか。腰が引けたんだろうか。デンゼルの意志は如何なものだったのだろう。(アントワーン・フークアはその後、マーク・ウォルヴァーグでさっさと「ザ・シューター/極大射程」原題:SHOOTER撮ってるが)
当初、フランク・ルーカスはリッチー・ロバーツ(演じるはラッセル・クロウ:当初はデル・トロ)により捕らえられるという実話に基づいた筋書きだったが、本作ではどうなったか。やや改訂されているのやもしれん…。





2007年、映画は完成した。監督には、デンゼルにとってアカデミー賞受賞作となった「Training Day」以来の付き合いだったアントワン・フークワから、ラッセル・クロウ主演作「グラディエーター」「プロヴァンスの贈りもの」(次回作「Body of Lies」もネ)の監督、リドリー・スコット。

さて、元となった掲載記事を書いたマーク・ジェイコブソンはフランク・ルーカスを非常に危険視しながらも、彼の中にある独特の個性を引き出したインタヴューに成功している。ニューヨークで最悪なヘロイン・キングであったルーカス。一見好感の持てる男に見える彼にこそ決して騙されないようにと警告を発しながら、雑誌「ニューヨーク」に相応しい悪のビッグ、スーパーフライの側面を描いた。

彼が記事をまとめる際のインタヴューテープを聞いた妻によると「これは悪魔か吸血鬼の話じゃない!」と嫌悪感剥き出しだったというが、果たして「×××」の百連発。しかし、奴が汚くってもワルでもこれは映画にしたい!と誰もが思いたくなる位にすっ飛び野郎だったのだがそれをデンゼル・ワシントンが演れりゃ、まあそりゃ面白いゾって期待のシロモノ。無論シナリオ、監督に左右されるが。これを駄作にしたら許せないっていいネタ、リドリー・スコットなら興味は尽きないゾ。





製作開始時から脚本を手がけていたのはスティーヴン・ザイリアン。
振り返れば…彼は「コードネームはファルコン」で脚本デビューし、「ボビー・フィッシャーを探して」で監督デビューを飾り、その後も脚本家として「シンドラーのリスト」「今そこにある危機」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「シビル・アクション」「ミッション:インポッシブル」「ザ・インタープリター」等を手がけ、「ハンニバル」「ブラックホーク・ダウン」では監督リドリー・スコットと組んでいた。そして昨年は久しぶりに「オール・ザ・キングスメン」で監督もつとめている…ザイリアンは本作に取り組み、紆余曲折あったものの手放すことなく最終的に仕上げた模様。

プロデューサーは当初ブライアン・グレーザー、ロン・ハワードだったが、本作ではブライアン・グレーザーは変わらず、脚本を手がけたスティーヴン・ザイリアンはエグゼクティヴ・プロデューサーに。ロン・ハワードは引き、監督をつとめるリドリー・スコットが加わった。
ブライアンは「ビューティフル・マインド」でクロウと組んでいる引く手数多の敏腕製作者の一人。2009年までに16本の映画製作の予定を抱えている。
ブライアンは、本作のエグゼクティヴ・プロデューサーのジェームズ・ウィテカーと「8マイル」、クロウ出演作「ビューティフル・マインド」「ブルー・クラッシュ」でカレン・ケーラ(シャーウッド)とも組んでいた。カレンは「インサイドマン」でジョナサン・フィレイと仕事をしている。





そのジョナサン・フィレイはプロデューサーとしての本数は少ないが、ロケーションマネージャーとして、またユニット・プロダクション・マネージャーとして現場を熟知している模様。本作もプロデューサーであり、ユニットプロダクションマネージャーをブランコ・ラスティングと共に兼任。デンゼル作品では「The Siege」(マーシャル・ロー)や先の「イン・サイド・マン」他、「宇宙大戦争」などの大作の現場から…「Off the Map」といった佳作の小品の製作も手がけている。

「プロヴァンスの贈りもの」「キングダム・オブ・ヘブン」「ブラックホーク・ダウン」「ハンニバル」「グラディエーター」…とリドリー・スコットとの仕事が多いブランコ・ラスティング。彼はザイリアンとの「シンドラーのリスト」、ニコラス・プレッジとTVの「ドラッグ・ウォーズ/麻薬戦争」を手がけている。ちなみに「ドラッグ・ウォーズ」の主演はベニシオ・デル・トロだった。

さらに「グッドフェローズ」等の原作・脚本家ニコラス・プレッジ(妻ノーラ・エフロン) に、「ブロークバック・マウンテン」で製作畑で頭角を現したマイケル・コスティガがエグゼクティヴ・プロデューサーに並んだ。






本作の製作において、ブライアン・グレーザーはこれまで製作したすべて(TV別)…75作の映画の中でも最も困難だった、と語っている。何故ならば、彼らは主人公フランク・ルーカスがのし上っていった時代のアメリカ、即ち今や姿を変えてしまったハーレムという舞台を作り上げなければならなかったからだ。
ニューヨークの不動産ブームにより、見捨てられたような建物が今や100万ドルを上回る高騰。ハーレム一帯の色褪せた通りが再開発によりアップタウンに姿を変えていた。かつてのニューヨークを知った者たちにとって、この40年にわたって進化した街並みであの時代を再現して撮影することは相当な労力が費やされた模様だ。刻々と変化する街…数時間前にはなかったもの…例えば、通りの印象が一変するような天幕を新たにつけた飲食店など…。そんな中、サウス・ブルックリンに60年代後半からあったというマルボロの公営団地など、物によっては壁を取り壊し、当時あった状態を再現し撮影としたという。

デンゼル・ワシントン扮するフランク・ルーカスは1968年にサウスカロライナからニューヨークに出てくるが、田舎から都会に出てきた男の変化は、彼が身にまとった衣服の変化で背景、プロフィール、経験、そして富を獲得していく成り上がりぶりを反映させていかねばならない。物語の時代再現に欠かせない衣裳は、デザイナーのイェーツにより180人分の俳優の衣裳…劇中の6年に渡る脚本に見合った個人のスタイルが用意された。





「グラディエイター」「キングダム・オブ・ヘブン」といったクラシカルなものから「マイアミ・ヴァイス」までを手がけるイェーツは、あの時代の…ペイズリー・シャツ、茶色の革ジャケットなどを探し出すためにニューヨークからL.A.までのあらゆるビンテージショップとコスチュームハウスでくまなく捜した。その際にはビジネスオンリーではなく、熱い情熱的なファンによってコスチュームは集められたという。例えば、1969年のヴィンテージの黒いカクテルドレスが必要な場合、そういった彼らに話すと、彼らはあっという間に手分けをして収集し、服を調達したという。イェーツは良いネットワークにあたった。
ワシントンには、64着のコスチュームが用意された。サヴィルローのスタイリングも無論欠かせなかった。

エグゼクティヴプロデューサーの一人であり、名作「グッドフェローズ」の原作者あるニコラス・ピレッジは、ハーレムと繁栄と抗争の時代をよく知っている人物。彼は17年間、警察担当記者だった。ピレッジはその当時からルーカスについて様々な話を聞かされていたという。本作の製作に際し、彼はハーレムでスムーズに撮影できるように尽力したという。




映画の下敷きとなった雑誌「ニューヨーク」掲載の「The Return of Superfly」では…
1970年代の初め、映画「スーパー・フライ」(72年:日本公開73年/音楽はカーティス・メイフィールド)の主人公を気取って黒革のコートを羽織って街を闊歩するルーカス。彼はメルセデス、コルベット、スティングレイ・・・と何台もの車を持っていながら、一等おんぼろのシボレーに座って、116通りと8通りの角に車を停めた。

「そんな糞みたいな300ドル程度のオンボロ車に俺がいるなんてこたぁ誰も考えねえよ。」とルーカス。
1度、彼は頭部を狙われた事があり、その恐怖感も手伝っての隠れ技だった。かつらや眼鏡、顎ひげで自在に変装したルーカス。

ノース・カロライナで過ごした少年時代にKKK団によって殺された従兄弟の姿を目にし、逃げ出したルーカス。十代で一端のギャングに成り上がっていく。ハーレムに初めて着いた時、こんなに黒人が大勢いる街!と歓喜した男は猥雑なエリアだったその街でのし上っていく。黒のマフィア、ハーレムの山の手マフィア組織を目論んでいた男。

ベトナム戦争の最中、旅行者としてバンコク入りし、アメリカ軍の中でも黒人兵士の溜まり場に入り込む。やがて軍用機でのヘロイン出荷を実行させるが、手を貸したのは殆どが徴集兵と下士官兵。
「将軍、大佐、イーグルを備えた奴、白い奴、そいつらは俺がそれまで会った連中で最も貪欲ないやらしい奴らだった。金を与えりゃ何でもする奴らさ」とルーカスは吐き捨てるように言い放つ。








ロールスロイスを運転する中国人を雇い、その男を「007」と呼んだルーカス。
男はケシの実る黄金の三角地帯へ誘う。ルーカスは蒋介石の残党ともコネクションを結ぶことになる。
やがてヘロインの密輸入にベトナム戦死者の棺という絶好の隠れ蓑を考え出すルーカス。彼の下には金が束になって舞い込んでくる。デトロイトのオフィスビル、ロサンジェルスやマイアミのアパートメント、プエルトリコの土地。さらに「フランク・ルーカスの楽園」と呼んだノースカロライナの125,000ドルの価値の雄牛を含む黒アンガス雌牛300頭を飼育する数千エーカーの牧場を所有。

そして、ルーカスの周囲にはモハメド・アリ、ジェームズ・ブラウン、ベリー・ゴーディ、ダイアナ・ロス…晴れやかな笑顔を見せ、素晴らしい役者が揃う。
オーソン・ウェルズがお気に入りで、ヘンリー・マンシーニがお気に入りである時期、よく聴いていたというルーカス。エバ・ガードナーとハワード・ヒューズにも会ったな、と懐かしむルーカス。そんな人殺しも盗みも薬もなんでもOKのキングだった男の話。

デンゼルにとっては、ユニークで演じ甲斐がある最高の役柄。絶対にこの役は他の俳優には譲れなかったはずだ。2004年当時、デル・トロもトレーナー付きの真夏のトレーニングで少しはシェイプアップしたんだがな。ま、体型的にはラッセル・クロウ同じようなもんだが、看板スターとしてはクロウがうわてであった、ことか。出演は叶わなかったが多少のギャラ(3億位だったっけ…)は支払われたものの、リドリーの手腕ならデル・トロでも見ごたえのある映画に仕上がっていたかもしれない。俳優も辛い思いをする…。この話は2004年の真夏、8月だった。



映画の主人公として、ダーティで魅力的なキャラクターであるフランク・ルーカス。元原稿になったマーク・ジェイコブソンの記事の魅力はルーカスのヘロイン王としてのワルのエネルギーに溢れていると思う。
で、2004年に中止もしくは延期か、と思った物語の映画化…この映画の主人公は…デンゼル・ワシントンではなく、もっと若手アフリカ系アメリカ人俳優が起用されるべき映画だと考えていた。
デンゼルにはルーカスの不敵で粗雑&猥雑な雰囲気はどうしてもイメージが重ならなかった。良いイメージを持つ役者がダーティーな側に立って、観客を裏切ってくれるのはお楽しみだが、フランク・ルーカスは一等最初からダーティーな側に立ちっぱなしなはずだった。そこまでのワルのディープさをデンゼルが演技の正念場と考えたとしても不思議はないのだが、ルーカス役は、彼自身のインタビューに見え隠れするワルで情け容赦ない下品さと僅かばかりの愛おしさ(う~ん表現力不足デス)がなけりゃツマラン。あの時代にゴージャスなワルと汚れ塗れたワルで突っ走った男、フランク・ルーカス。デンゼルもTraierいいんだが、我侭言えばも少し若手でも良かった気がするなぁ~。リドリー・スコットにも文句はつけまへんッ、スキです…ま、当初イメージした「アメリカン・ギャングスター」より渋好みのずっしり重量級には仕上がっていそうな気配デス。(2007年/製作国アメリカ/アメリカ公開2007年11月/日本公開2008年でしょ)


▲International Trailer


▲Trailer


▲Trailer


▲Official site
オフィシャルでもTRAILERはご覧になれます。


●Directer:Ridley Scott リドリー・スコット
●Screenwriter:Steven Zaillian スティーヴ・ザイリアン
●Cast:Denzel Washington デンゼル・ワシントン Russell Crowe ラッセル・クロウ Josh Brolin ジョシュ・ブローリン Cuba Gooding Jr. キューバ・グッテン・ジュニア Chiwetel Ejiofor キウェテル・イジョフォー Common コモン Ted Levine テッド・レヴィン